細江英公「鎌鼬」

細江氏は高校時代に富士フォトコンテストで最高賞を受賞、その後、現東京工芸大学で写真を専攻し、卒業後フリーとなる。東松照明らと写真家集団VIVO結成。1963年に三島由紀夫をモデルにして撮った「薔薇刑」で日本写真批評家協会作家賞受賞。

巣鴨、葛飾、そして土方氏の故郷である東北・秋田の農村を舞台に、舞踊家である土方巽をモデルにして撮ったのがこの写真集。オリジナルは1969年に現代思潮社より出版された。2005年に完全復刻版として500部限定復刊され、この写真集は2009年に8点の未発表作品を追加して出された普及版。装丁は田中一光氏。

細江氏は「球体二元論 ー私の写真哲学ー」という本を書いている。写真とは主観と客観をを両極とする球体であり、主観を目指して進んでも球体であるがゆえに、いつしか客観に辿り着く。すなわち主観と客観(言い換えれば記録と表現)のせめぎあいこそが写真のダイナミズムという考え。

前回写真集展示の荒木経惟の言葉では「情」を撮るか「事」を撮るか、も同様な意味合いだと思うが、記憶から記録へとフランス、サンルウの窓の景色から始まった写真が、新しい表現手段として日本で確立されたとも云えるVIVOそしてPROVOKEへ繋がる流れは、いま見てもとても刺激的である。