森山大道「Daido hysteric no.8」

今月の写真集は、先月に続きhysteric大道本。97年発行のno.8。

大道氏といえば新宿ではあるが、この本の被写体である大阪は、氏の生まれ育った街である。そういう特別な関係性で、郷愁からセンチメンタルな方向へ流れるかと思いきや、逆に奇をてらうことなく氏本来の「街をCopyする」写真群となっている。大阪という街が持つ雑食性が郷愁という言葉を飲み込んでしまうほどの力を持っているのかもしれない。写真家と被写体としての街の対峙が楽しめる。

私事ではあるが、高校ぐらいあたりだから70年代の終わり頃から80年代を通し、暇ができると心斎橋から難波、そして日本橋から通天閣を経て、気分によっては東に向かって天王寺公園、もしくは南に下って動物園前商店街を通って山王や天下茶屋あたりまで、暇をみつけてはポケットにTRI-Xを5本ぐらいつっこんで彷徨していた。ナンバから日本橋までは時代と共に変化してきたハレの街。その先の時代に取り残されたのか、頑なに時代に背を向けたのかの通天閣界隈。通天閣の展望台から観る景色は、歴史やら風俗やら混然一体と箱庭のように詰め込んだ街である。撮り歩いていて面倒なことに巻き込まれたりはしなかったが、面白い体験は色々あった。この写真集を見直して、また大阪の街を久々にしっかり撮ってみたいなという気分になった。