森山大道「犬の時間」

いぬのとき。

細江英公さんの事務所を辞めて独立した64年から83年までの未発表作品をまとめたもの。どこで買ったか忘れたけどサインが入っていた。

この本が出た2年前にヒステリックグラマーから大型写真集が出て、それまでと違ったファンを獲得し始めた頃の写真集。写真集にありがちだが、初版のみの発行だったようで、いまはプレミア価格でアート系古本屋に並んでいるようだ。64-83年の未発表作品ということで、森山大道という写真家が生まれ、確立した時代のアナザーストーリー的な趣で楽しめる。

20年程まえに出版された写真集であるが、時代が過ぎ去り、動物愛護やらペットブームで街から野良犬をほぼ見かけなくなって、ペットとして飼われてる犬も大抵はきちんと躾けられて吠えることすら少なくなった今、作者の云うところの「犬」という概念を、現代の都会暮らしの人々が感覚として感じ取れるかが疑問になってしまった。

日常の風景を切り取るスナップ撮影という行為は、実際にやってみればわかるのだが、まさしく野良犬の眼で街をさまよっているような気持ちになる。たとえ自分のテリトリーであっても、緊張と不安と獲物を見つける期待とが混在したあの飢えた気分。かつては街中でよく見かけた野良犬としか言いようのない感覚。現在見かける犬ではなかなかイメージしずらいかもしれない。