北井一夫「村へ」

北井一夫「村へ」

 

北井一夫氏は1944年満州生まれ。日大芸術学部写真学科に進んだもののほぼ学校には行かず、横須賀港米軍原潜寄港反対闘争の様子を記録した「抵抗」を自費出版。71年には写真集「三里塚」などドキュメンタリー写真家として活動し、72年に日本写真協会新人賞受賞した。
そんな北井氏が、高度経済成長・日本列島改造論が叫ばれた日本で、急激に変わりつつある農村の暮らしを単なる風景としてではなく、生活の中のひとつひとつに焦点をあてていく彼ならではのやさしさとドキュメンタリー写真家としての視点で、その頃にまだ日常の中に存在していた日本の原風景的生活の姿が記録されている。1973年からアサヒカメラに連載され、その後、79年まで「そして村へ」としてシリーズが続くことになる。
木村伊兵衛写真賞は、1974年に亡くなった木村伊兵衛氏の業績を記念して1975年にアサヒカメラを発行している朝日新聞社によって創設。毎年1-12月に写真展・雑誌・写真集で発表された作品を対象として、翌年3月に選考・発表される。その第一回受賞者が北井一夫氏「村へ」となり、受賞記念のアサヒカメラ別冊として1976年に発行された廉価版写真集がこの本である。
ちなみに賞の名前になっている木村伊兵衛氏(1901-1974)は、土門拳氏とともに戦前戦後期の日本の現代写真の黎明期を担った写真家。特に日本における街角スナップ写真の草分けとして知られており、特に秋田やパリを映した写真が有名である。
この本が発行された76年と言えば私は中学生。兄がやってたのを見て写真に興味を持ち、おさがりのトイカメラFUJIPETでその頃ハマっていた飛鳥散策などの写真をたまに撮っていた頃。いつの間にか兄が買って本棚に刺さっていたこの本を見て、絵葉書的風景ではないモノクロ写真に興味を持ち、街角スナップ写真を撮るようになったきっかけでもあり、日本の地方への興味のきっかけともなった写真集です。

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