北井一夫「三里塚」

今週の一冊の第一回目に紹介した写真集「村へ」の北井一夫が、それ以前の1969年から71年にかけて、三里塚闘争を撮影したものである。
三里塚闘争とは、1960年代からの高度経済成長とともに国際化の需要増に対応するため東京に新空港を作ることになり、千葉県成田市三里塚芝山地区という御料牧場やのどかな農村地帯に建設されることになった。ただ、事前説明や代替地等の準備がずさんなことから、住民に反対運動が勃発し、そのころの社会情勢と連動したイデオロギーも流入して、66年に反対同盟が結成され、三里塚闘争と呼ばれる反対運動が始まった。
この本に載っている写真は「闘争的」ではなく、そこに「暮らす」地元農民や反対運動に参加するためにやってきた人々が写されている。インタビューでの発言をみると「三里塚はアジェみたいな感じにしたかった」(注:アジェとはアジェとは20世紀初頭にフランスで活躍したカメラマンJean-Eugène Atgetのことで、フランスの街角の日常の情景を数多く残している)とある。
闘争は人がやっている。「闘争的」な写真はそれこそジャーナリズムの世界で数多く撮られている。しかしながら闘争を行っている人々自体にフォーカスした写真は少ない。だが、それこそが本質でなくてはいけない。

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